山下の素晴らしいギターショウ
日本の最も期待されている新進ギタリストの山下和仁は、ウィーンコンサートで、その才能を最も強く聴衆に印象づけた。モーツァルトのテーマによる変奏曲では、1つ1つの音色が、テレビの洗剤のコマーシャルのように柔らかであった。また「アストラル・フレイクス」では、ジャズ的な演奏を試み、アドリブを披露した。 しかし彼の今までの最も大きな飛躍は、ソロで披露したムソルグスキーの「展覧会の絵」であり、彼はそれで一躍、ギターの芸術家になったのである。彼の演奏は、色彩豊かに、生生とした音のスケッチが、コントラスト豊かに表現され、そしてまたそれは、ほとんどオーケストラのような多層性をも持ち合わせているのである。魔女バーバヤガーのところでは魔法のように早く奏で、カタコンベの旋律では、休息をするように、はっきりとしたラインで、ほろ苦いハーモニーを奏でた。このような光景は、目を閉じると再びよみがえってくるのである。いままでだれもギターで、そのような光沢を放ち、論理的に、多くをとめどもなく語った者はいなかった。