新しい音の世界から
・・・・・ギターフェスティバルで日本のスーパースター山下・・・・・・・・
ピアノの場合、交響曲から曲を選んで演奏するのはあまり好まれていない。同様に「ギター演奏において、交響曲から曲を選んで演奏する」ことはめったにしない。しかし山下和仁はそれを行ない、自分で演奏し、素晴らしいものとし、また聴衆が繰り返し聴きたくなるように編曲したようである。この日本の若く素晴らしい音楽家はウィーンギターフェスティバルに置ける彼の2回目の夜に、アントニン・ドヴォルザークの交響曲「新世界」から、有名なスロー楽章を、彼独特の弦のバージョンで演奏し聴衆を感激させた。
山下は最初から、暗く、謎を秘めたような音色で正確に、アルペジオを奏でた。しかし彼は、珍しく変わった演奏を意図したのではなく、素直にドヴォルザークの音楽を、あらゆる面から、また、あらゆる音色をギターで表現したかったことは明確である。10数年来、この楽章が繰り返し演奏され、非常に俗化してしまったが、彼はこれを俗化せず、内に向けて内容を大切にし、その磨かれた音楽の感性で、口では表せない多様な音色のニュアンスを、彼はギターで魔法のように演奏したのである。そして聴衆はこの「ラルゴ」で、どのくらい、様々な音色が表情豊かに、お互いに歌いあっているか、他のコンサートではめったに感じ得なかったものを、彼の演奏に感じ、深い感銘を受けたのであった。
またこのリサイタルでは、ウィーンフィルハーモニーのフルート奏者ウォルフガング・シュルツと山下が、カステルヌォーヴォ・テデスコとジュリアーニの作品を2、3、素晴らしく演奏し、本当に楽しませてくれたが、聴衆はこのことを、ほとんど忘れてしまったかのようであった。