(『Trio of great guitarists visit Los Angeles area』というタイトルで、同時期にロスアンゼルス訪問中であった、カルロス・モントヤ、ジョン・ウイリアムス、そして山下和仁さんの紹介記事が掲載されました。(以下はその中から山下和仁の部分)
[日本人ギタリスト、アメリカに再来]
山下和仁は日本の長崎出身で、マエストロ・セゴビアにギターを学んだ一人である。また、彼はナルシソ・イエペスからも学んでおり、16歳の時、スペインのラミレスコンクールで、一位を獲得している。
彼のアメリカでのデビューは、フルート奏者ジェイムス・ゴールウェーとの共演で、1987年に行われた全米ツアーであった。そして、昨年の秋にはソロツアーを行っている。彼の完璧なテクニックと、きめの細かい演奏は、人をひきつけて離さない。
山下は、彼自身の編曲によるバッハの『バイオリンのための無伴奏ソナタ』から第3番と、ドボルザークの『新世界より』を演奏した。1720年にバッハが作曲した6つのソナタの中の一曲は、複雑かつ正確な対位法を特色とする、層の厚い作品である。バッハがヴァイオリンとチェロのために作曲した作品は、ギターで演奏してもそう無理を感じさせない。それというのも、ギターの音域が、ヴァイオリンとチェロにちょうどまたがっているからである。山下のその演奏は、この上ない素晴らしいものであった。
クラシックの曲を自分自身の演奏のために編曲する際、山下は、セゴビアや、パークニング、ウィリアムスのようなクラシックギターの名手の伝統的なやり方に習う。ヴァイオリンやピアノに比べて、ギターのために書かれた曲というのが非常に少ないため、ギタリストにとって、編曲することは自分自身の演奏の幅を広げる、素晴らしい手段なのである。山下和仁は、有名な彼自身の編曲である『新世界より』で、プログラムの後半を飾った。45分にもわたる交響曲をギターソロのみで演奏するために編曲することは、ヴァイオリンのソロをギターで演奏するためのそれとは比べようがないほど難しいことである。しかし、山下はこの偉大なる業を見事にやってのけた。調子が美しく、民族的なドボルザークのテーマは少しも損なわれることなく、ギターに移されたのである。そして彼は、最後に観客総立ちでの拍手喝采を浴びたのであった。